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【DLPFC】慢性腰痛と脳の関係

じかん

ギックリ腰は、ドイツで“魔女の一撃(hexenschuss)”などと呼ばれています。何の前触れもなく、突然痛みに襲われることをこのように言ったそうです。

ギックリ腰自体は、安静にしていれば激しい痛みはなくなります。

ところが、腰痛になった人の中には三ヶ月以上経っても痛みが残る人がいます。
痛みが慢性的になってしまっている状態・三ヶ月以上腰の痛みがある場合を慢性腰痛といいます。
そして、慢性腰痛に苦しんでいる人の中には、レントゲン写真やMRIなどの画像診断で何の異常も見られない場合があり、その割合は実に80%以上ともいわれています。

画像診断では完治しているはずなのに、痛みで苦しんでいるという、この謎の慢性痛が最近になってようやく原因が判ってきました。

脳の中に、DLPFCと呼ばれる部位があります。
DLPFCとは”背外側前頭前野(Dorsolateral prefrontal cortex)”の略語です。

腰痛に悩まされている人は、このDLPFCの体積が減少していることが判ってきました。そのために、痛みのある人のDLPFCの活動量は、痛みのない人の半分程度にまで落ちています。
痛みが激しかったり、長く痛みが続いている人ほど、DLPFCの活動が落ちています。

そもそも、私たちは痛みをどのように感知しているのでしょうか?

筋肉や骨が受け取った刺激は、神経を辿って脳に入ります。そしてその刺激は神経を興奮させます。このとき形成された神経ネットワークが、痛みの神経回路となるのです。
しかし、やっかいなことに、筋肉や骨から刺激が届かなくなっても、痛みの神経回路は残っています。これが前述の「画像では完治しているのに痛みが続いている」状態です。
DLPFCは、興奮している痛みの神経回路を鎮める働きをすると考えられていますが、その機能が落ちてしまうので、慢性腰痛に陥ってしまうのです。

では、なぜDLPFCの活動が低下してしまうのでしょうか?
これには、心理状態が深く関わっていて、「また腰痛に襲われてしまうのではないか」という強い恐怖心と、それによるストレスがDLPFCを萎縮させているといわれています。この恐怖心を克服できれば腰痛が改善できるとして、近年そのような治療が注目されています。

治療は大きく二つあります。

1つ目は、腰痛の正しい知識を身に付けることです。
正しい知識を得て、痛みが鎮まることを完全に理解できれば、DLPFCの活動量が増え、痛みに対する恐怖心がなくなってきます。
そのために、専門家は腰痛のメカニズムや治療法を、きちんと説明していきます。
これは、脳の“認知機能”の治療になります。

2つ目は、体を動かすことです。
痛みを怖れて体を動かせない心理状態を克服していきます。
はじめは、体を後ろに軽く反らすだけ良く、この段階で痛みや痺れが誘発されなければ、ほぼ問題ありません。
体を反らすことを繰り返すうちに、痛みが出る恐怖心を克服できるようになります。
つまり、体を反らすという行動によって恐怖心を解消することになります。

上記の2つの治療を組み合わせた治療法があり、「認知行動療法」と呼ばれています。
認知行動療法は、精神科領域において行われることが多かった治療法ですが、慢性腰痛に対する治療では、個人個人のレベルに合わせて恐怖心の克服していき、運動療法によるストレッチ等を行っていきます。
この治療法は、海外では多く行われていますが、現段階で日本では健康保険の適用外になるため、行われている施設はまだまだ少ないのが現状です。

さて、私が行っている鍼灸治療の中に「慢性痛に対するアプローチ法」というものがあり、そこで使用しているある経穴(ツボ)が、まさにこのDLPFCの部位に向けてのアプローチで、ここを刺激することによりDLPFCの活性化に繋げています。
私が専門で行っている、心の不調(うつ状態など)の治療においても、やはりこのDLPFCは常に意識しています。

最後に、腰痛になった場合に体を動かさないでいると関節が固まったり血液の流れが滞ってしまうので、体にとってあまり良くありません。
ギックリ腰などの腰痛になったら、初期の急激な痛みが引くまでは安静にし、専門家と相談しながら少しずつ体を動かしていくのが良いでしょう。

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